最近の日本馬で言えばアーモンドアイ。ちょっと前だとジェンティルドンナやウオッカにダイワスカーレット。世界に目を向ければエネイブルなど、牝馬の活躍が目覚ましい昨今ですが、皆さんは歴史的牝馬であるキンチェムという競走馬をご存知だろうか。
オーストラリアのウィンクス(こちらも牝馬)が33連勝というとてつもない記録で最近引退しましたが、このキンチェムは何とデビューから引退まで54戦して無敗。一度も負けなかったのです!ヤベェ!
1800年代後半にハンガリーで活躍した伝説的な競走馬であるキンチェムはその強さだけでなく、とってもチャーミングな魅力や伝説を数多く残している競走馬なのである。この記事では歴史的牝馬であるキンチェムの事を紹介していきましょう!
えっ?ウマ娘のまとめサイトなのに最近競馬記事に集中しすぎじゃないかって?知らん!
キンチェム無敗伝説
それでは早速ですがキンチェムの無敗伝説を紹介していきましょう。
誕生
キンチェムはハンガリーの競走馬です。ハンガリーは当時ヨーロッパ屈指の強国で、競馬のレベルはめっちゃ高かったんだとか。キンチェムはハンガリー語で『私の宝』という意味があり、夫婦や恋人で使うと「あなた」という意味。私には一生無縁の言葉だ。
キンチェムはひょろっとした暗い毛色で外見が悪いと判断されていて、オーナーは走らないと判断していてあまり期待されていなかったそうです。
しかしキンチェムは仔馬の頃にロマと呼ばれる移動型民族に誘拐された事があります。他にも沢山の競走馬がいるのに何故かキンチェムだけ。その理由を犯人は後にこう語っています。
確かにあの馬の外見は見劣りする。だけどそれを補って余りある勇気を持っていたんだ。
いや、見る目スゲーな!誘拐してないで馬券を買いなさい!
2歳
そんなこんなでキンチェムがデビューしたのは1876年6月。デビュー戦を4馬身差で圧勝してから快進撃が始まります。2歳の時はドイツ、ハンガリー、オーストラリア、チェコと4カ国でレースをして10戦10勝。ブラック企業もビックリのスーパーハードスケジュール。
3歳
3歳になってもい勢いが止まりません。ヨーロッパの強豪が集結するオーストラリアダービーを10馬身差で余裕勝ち。古馬相手でも短距離でも長距離でも余裕勝ちという無双モードに突入して17戦17勝。ゲームだったらもう少し難易度難しくしようかなって考えるレベルで圧勝が続きます。
4歳
4歳になっても勿論無双は続きます。4月から5月までの間にかるーく9連勝して6カ国でレースをして15戦15勝。この頃になるとイギリスとかフランスとかにも遠征して、「いやいやウチの国の馬には勝てないでしょ…」と思っていた紳士達の目の前でも余裕勝ちをかましていきます(三頭立てで三番人気の時もあった)。
5歳
既に伝説になっているキンチェムは5歳になって更に覚醒します。5日間で3レース行われたレースの全てに出走して全勝。最終日はキンチェムがあまりにも勝ちすぎるからって理由で斤量76.5キロを背負わされるも勝利。
5歳時は12戦12勝。引退理由は疲れではなく怪我。同厩舎の馬と喧嘩になって脚を怪我した事が理由で引退を決定。通算成績は54戦54勝。
キンチェム伝説
世界競馬史上に残る奇跡の名牝であるキンチェムは、ハンガリーの奇跡やハンガリーの脅威と呼ばれています。ここからは残されている数々の伝説について紹介していこう。
親友は猫
馬と猫と言えばエピソードは日本馬でも多くあるが、キンチェムと猫のエピソードはとってもホッコリします。
当時は飛行機なんて当然ありませんから、国外への移動は全て汽車でした。キンチェムはとある猫と大の仲良しで、いつも汽車で移動する時は猫と一緒だったそうです。
所がある日、イギリスのグッドウッドカップに勝利していつもと同じように汽車に乗り込むと親友の猫が行方不明に。その時は猫が見つかるまでキンチェムは2時間鳴き続けたそうです。
その後、ひょっこり猫が戻ってくるとキンチェムは何事もなかったかのように汽車に乗り込みました。猫がいないと汽車への乗車を嫌がる素振りも見せていたそうです。
ヒナギクが好き
最強最速の競走馬としてヨーロッパ各地で活躍していたキンチェムは大のヒナギク好きだったそうです。
スタート前はいつも必ず周りをキョロキョロして花を探します。そしてヒナギクを見つけるとムシャクシャと食事。そもそもスタート前になにやら考え事をする癖があって、それが原因で何度もスタートを失敗していました(でも圧勝)。
もしかしたらヒナギクの事を考えすぎていたのかもしれません。
キンチェムの井戸
キンチェムはとにかく自分の食べるものや飲むものに拘る馬でした。食料である穀物や干し草は全てタピオセントマルトン牧場で生産されたもので、それ以外は一切口にしないのです。それは水も同じで、タピオセントマルトン牧場で汲まれたもの以外は一切飲もうとしない拘りっぷりです。
とあるレースで勝利した後にタピオセントマルトン牧場で汲まれた水が尽きてしまって、陣営は慌てて色々な水を用意するがキンチェムは飲みません。
しかし3日経ってからバーデンバーデン競馬場の近くにある井戸から汲まれた水だけは気に言ったようで、「うーん、この水ならエエで」という事で3日ぶりに水を飲みます。その井戸はキンチェムの井戸として観光名所になっているそうです。スゴイ
犬に絡まれても大丈夫
バーデン大賞というレースでキンチェムは馬生初の同着1着を経験します。その原因は騎乗していたマデン騎手が泥酔していたから(何て奴だ!)。
同着の後に行われた決勝戦でキンチェムは野良犬に襲われます。いきなり野良犬に襲われたキンチェムはさすがにビックリ。その隙に相手の馬は一気に突き放します。
しかし安心して下さい。キンチェムはキャンキャン煩い野良犬を後ろ足で豪快に蹴っ飛ばして猛追。結果的には6馬身差をつけての圧勝。強い。
フランキーとの信頼関係
キンチェムの面倒をずーっと見ていたのはフランキーという若い男性。まるで恋人同士のように仲が良い事で知られていました。
とある寒い夜、キンチェムが目を覚ますと隣には毛布を被っていないフランキー厩務員の姿が。キンチェムは自分が被っていた馬衣をフランキーにかけてあげます。それ以来、キンチェムはフランキーが毛布を被っていないと自分も馬衣を纏うのを拒否するようになったんだとか。「フランキーが寒そうな格好してるのに自分だけ温まってたまるか!」という超イケメン牝馬。
フランキー厩務員は元々“姓”を持っていませんでした。後に従軍して姓を名乗れるようになった時に『フランキー・キンチェム』と名乗ります。そして生前その名前で一生を過ごし、死ぬ間際には「墓標に「フランキーキンチェム」と刻んでくれ」と言い残します。生涯独身を貫き通したフランキーにとって、キンチェムは正に恋人でした。
現在も続く血統
キンチェムは引退後繁殖入りして5頭の産駒を送ります。子供の成績も非常に優秀で、その血統は現代も続いており、1974年の英オークス馬ポリガミーはキンチェムの13代子孫。
17代目の子孫キャメロットは2012年に2000ギニーとダービーステークスを制して英国クラシック2冠馬となっています。没後130年以上経ってもまだ繋がれている血統!血統ロマン!
ちなみにキンチェムは今でもハンガリーの国民的英雄で、映画が作られたり、キンチェム競馬場が出来たり、銅像があったり、旅行者がキンチェムの話をするとサービスしてくれるなんていう噂もあったり、とにかく国民全員大好きな名馬なのである。
複雑な時代背景もあって、まさにハンガリーの象徴で活躍していたキンチェムは今でも愛され続けている伝説的名牝でありながら、語り継がれているエピソードはとっても温かくて素敵。
猫と花が大好きで、飲み水に拘るくらいグルメで鬼のように強いけど厩務員さんにはデレデレ、キンチェムが出るなら出走ヤーメタって馬が続出したりと、とにかくエピソードのレベルがどれも規格外。まさに伝説的名馬!
所で上の動画で紹介してるキンチェムの映画めっちゃ面白そうなんだけど見た事ある人いる?ネトフリもプライムにもなかったけど、他に何かで観れるんだろうか。見たい!
ピクシブでキンツェムをモチーフにした話がでるSSあったけど
本当にエピソードがお嬢様って感じで可愛いのよね
フランキーとの逸話もその執事みたいな感じでほっこり